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【書評】経営・マーケティング戦略に活かせる実践的なヒント 『新装版 戦略論の原点 軍事戦略入門』|J・C・ワイリー 著|奥山 真司 訳|芙蓉書房出版

はじめに

現代ビジネスにおける「戦略」とは何でしょうか?
本書『新装版 戦略論の原点 軍事戦略入門』は、軍事戦略の古典として知られていますが、単なる歴史的な教養書ではありません。むしろ、経営者やマーケティング担当者にこそ読んでほしい、実務に活用できる戦略的思考の基礎が凝縮された一冊です。この記事では、本書から得られるマーケティングやブランディングに役立つ具体的なポイントを紹介します。
 
書誌情報
 

戦略の基本概念をビジネスに応用する

本書で定義される戦略とは、「目標達成のための体系的な行動計画」です。これは単なる目標設定や計画書の作成ではなく、限られたリソース(資金、人材、時間など)を最大限に活用して成果を上げるための包括的な方法論を指します。中小企業や小規模事業者にとって、「限られたリソースをどう効率よく使うか」は常に重要な課題です。例えば、新規顧客獲得とブランド構築のどちらに優先的に投資すべきかを考えるとき、戦略的な思考が不可欠になります。
 

マーケティングとブランディングに活かせる戦略概念  ―「順次戦略」と「累積戦略」―

本書では、「順次戦略」と「累積戦略」という2つの戦略概念が紹介されています。これらの考え方は、日々のマーケティング活動や長期的なブランド戦略に直接活用できます。

順次戦略:短期的なマーケティング施策

順次戦略とは、成果が目に見える形で段階的に積み重ねられる戦略です。以下のような施策が該当します。
  • 短期的な数値目標(売上や顧客数)の達成を重視
  • 即効性のある施策を展開
    • 例:期間限定キャンペーン、季節商品の販促、タイムセールなど
  • 効果測定が容易で、短期的な成果が確認しやすい

累積戦略:長期的なブランド構築

一方、累積戦略は、小さな取り組みを積み重ね、ある時点で決定的な成果を生む戦略です。
たとえば
  • 企業価値やブランド力の向上を目指す
  • 一貫したメッセージを継続的に発信
    • 例:企業理念に基づく広報活動、社会貢献活動、高品質な顧客サービスの提供など
  • 即効性は低いものの、持続的な競争優位を築く
順次戦略累積戦略
目的短期的な数値目標の達成企業価値・ブランド力の向上
特徴成果が目に見える形で段階的に積み重ねられる小さな取り組みを積み重ね、ある時点で決定的な成果を生む
実施例期間限定キャンペーン、季節商品の販促、タイムセール企業理念に基づく広報活動、社会貢献活動、高品質な顧客サービス
効果の特徴効果測定が容易で、短期的な成果が確認しやすい即効性は低いが、持続的な競争優位を築く
これらの戦略を状況に応じて柔軟に使い分けることが、ビジネスの長期的な安定と成功の鍵になると考えられます。
 

戦略立案に役立つ4つのポイント

マーケティングやブランディングにおいて「順次戦略」と「累積戦略」を適切に活用するためには、具体的な戦略立案が欠かせません。本書では、現場での実践を支えるために必要な考え方やアプローチについても多くのヒントを与えてくれます。ここでは、戦略を実務に落とし込む際に特に役立つ4つのポイントをご紹介します。

1.自社の強みを明確にする

効果的なリソース配分を行うには、自社の競争優位の源泉を正確に理解することが重要です。強みを明確にすることで、優先順位を見極めた戦略的な投資が可能になります。
例:
  • 他社にない高度な技術力を活かして新製品を開発する。
  • 高品質な顧客対応を武器に、リピーターを増やす施策を強化する。
  • ユニークなブランドイメージを訴求し、競争の少ない市場で独自のポジションを築く。

2.柔軟性を持った計画を立てる

市場環境や消費者ニーズは常に変化します。その変化に対応できる柔軟な計画を立てることが成功の鍵です。定期的な見直しと改善を繰り返すことで、戦略の精度を高めましょう。
例:
  • 顧客フィードバックをもとに商品やサービスを改良する。
  • 競合分析をもとに、価格やプロモーション内容を適時調整する。
  • 新たなトレンドを取り入れて、既存商品に新機能を加える。

3.現場での実践を重視する

戦略は現場での実行を通じて初めて成果を生みます。現場の状況を把握し、柔軟に対応する姿勢が欠かせません。
例:
  • 販売スタッフが顧客から直接ヒアリングした声を商品改善に活用する。
  • 試食イベントでの顧客の反応を基に、商品の改良ポイントを特定する。
  • データ分析を活用し、店舗運営やスタッフ配置を最適化する。

4.差別化戦略を追求する

競合との差別化を図るため、自社独自の価値を提供する戦略を練ることが重要です。他社にはない特長を活かし、顧客に強い印象を与えましょう。
例:
  • ニッチ市場に特化し、大手が参入しにくい分野で地位を確立する。
  • 独自性の高い商品やサービスを開発し、新しい価値を提供する。
  • 持続可能性や社会的意義をテーマにしたブランド戦略を展開する。
 
これらのポイントを押さえることで、本書が示す戦略概念を実務に活かしやすくなります。それぞれの項目を自社の状況に当てはめて具体的な行動に落とし込むことで、成果の最大化が期待できます。
 

まとめ: この本から学べる3つのポイント

本書は、経営者やマーケティング担当者が戦略を考える力を高めるために、次の3つの大切なポイントを教えてくれます。
 
  1. 短期と長期を両立する統合的な視点
  1. リソースの最適配分による効率的な戦略実行
  1. 市場変化に柔軟に対応する適応力の向上
 
これらを実務に落とし込むことで、短期的な成果と長期的な価値を両立する持続的な成長が可能となります。
 

最後に

『新装版 戦略論の原点』は、戦略立案に取り組む中小企業経営者やマーケティング担当者にとって、実務で役立つヒントが詰まった一冊です。短期的な成果だけでなく、長期的な成功を目指すための考え方を学べる内容となっています。
経営やマーケティング戦略を考える上で、新たな視点や気づきを得られる本書を、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
 

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