前年に売れた商品を、今年はどれだけ仕入れるか。販促計画では、過去の実績を具体的な数量や売場展開に置き換える判断が求められます。
しかし、「前年に売れたことがわかる」のと、「今年も仕入れを増やす根拠がある」のは別の話です。前年の好調を確認できても、その理由や、今年も同じ条件が成り立つかまでは、十分にわからない場合があります。
そのとき、データをどのように計画へ反映すればよいのでしょうか。
当社が運営するnote連載「月刊販促設計」では、2027年1月の販促計画を考えるため、前年同月である2026年1月の家計調査と気象データを分析しました。そこで重視したのが、情報の確かさに応じて、計画への使い方を変えることです。
本稿では、その分析を事例に、前年データを数量の根拠にする場合と、対応を準備する手掛かりにする場合の違い、そして判断を次の分析につなげる方法を整理します。
前年の好調を確認してから、計画に使える条件を確かめる
2026年1月の家計調査(二人以上の世帯)では、保健医療が8か月連続、教養娯楽と家具・家事用品がそれぞれ3か月連続で実質増加していました。実質増加とは、物価の変動を取り除いた後でも支出が増えていることを指します。
ただし、増加が続いているという事実だけでは、その先も同じ動きが続くとは判断できません。各月で増加を支えた商品やサービスが異なる場合もあり、前年の支出水準によって増減率の見え方も変わります。
こうした連続増加は、今年も注目して確認する分野を選ぶ手掛かりにはなります。しかし、それだけを理由に、関連商品の仕入れ数量を増やすことはできません。自店で扱う商品の動きや、増加を支えた条件を確認する必要があります。
また、家具・家事用品の伸びについては、寒さが購入を後押しした可能性を考えました。しかし、内訳を確認すると、冷暖房用器具は勤労者世帯、無職世帯の双方で増えていた一方、寝具類は世帯の種類によって動きが大きく異なっていました。
寒さとの関係を考えるなら、寝具類の購入増加が一方の世帯に偏っていた理由も確認する必要があります。在宅時間や既に持っている寝具など、寒さを購入につなげる条件に違いがあった可能性もありますが、このデータだけではわかりません。
この違いだけで寒さの影響を否定することはできませんが、家具・家事用品全体を、一括して「寒かったから売れた」と扱うこともできませんでした。
前年の実績を計画に使う際には、好調だったことに加え、何がその動きを支えたのか、その説明がどこまで確かめられているのかを確認する必要があります。
数量を決める根拠と、対応を準備する手掛かりを分ける
前年に大きく伸びた商品でも、その理由が十分にわからなければ、増加率を今年の仕入れ数量へそのまま当てはめるのは難しくなります。
一方、数量を決めるには不十分な情報でも、対応を準備する手掛かりにはなる場合があります。
例えば、冷暖房用器具の購入増加と寒さの関係が考えられても、全国の月次データから、自店で何個売れるかまではわかりません。それでも、冷え込みに備えて在庫や補充にかかる日数を確認し、売場を拡大できるよう準備することはできます。
ここでは、前年の伸び率を数量へ置き換えるのではなく、需要が動く可能性のある条件を、準備に活かしています。
仕入れ数量を決めるには、自店の商品別・週別実績、現在の在庫、価格や企画の変更、調達にかかる日数なども必要です。公表統計は市場の動きを捉える材料として使い、店舗の具体的な数量は、自店の情報を重ねて判断します。
一つのデータに、計画のすべてを決める役割を持たせないことが重要です。
「何を見たら対応を変えるか」まで決めておく
対応を準備しても、変更のきっかけが曖昧では、実際に動く判断が遅れます。計画の段階で、何を確認し、どのような動きが出たら対応を変えるかを決めておきます。
例えば、防寒用品であれば、自店の過去実績から販売が動き始める気温の目安を確認します。その水準を下回る予報が出た段階で補充体制を点検し、実際の販売数量も増えてきたら売場を広げる、といった手順が考えられます。
気温の目安は、商品や地域によって異なります。十分な実績がなければ、最初から固定した基準にせず、予報と売れ方を記録しながら調整していきます。
2026年1月の東日本・西日本は、月平均では平年並みの気温でしたが、旬別では暖かい時期と寒い時期が入れ替わっていました。月全体の評価だけでは、こうした変化を捉えきれません。
月間計画を用意したうえで、週ごとに予報や販売状況を確認し、重点商品の展開を調整します。そのための確認項目と手順も、計画に含めておく必要があります。
確かめられないことは、確認する課題として残す
分析しても、購入が増えた理由を特定できない場合はあります。
その際、「理由がわからないから扱わない」としてしまうと、次の分析につながりません。何が不足していて判断できないのかを整理すれば、これから確認すべき課題になります。
例えば、全国では伸びているものの、自店の商圏でも同じ動きがあるかはわからないのであれば、まず自店の販売実績を確認します。特定の世帯で購入が増えているなら、自店の客層や買われ方にも同様の特徴があるかを調べます。
「確認できた事実」「考えられる理由」「まだ確かめられていない点」を分けておくと、追加で集める情報が明確になります。
理由を推測する場合も、推測であると明記し、確認できた事実と混同しないようにします。わからないことを残す際には、次に何を確認すれば判断が進むのかも示すことが大切です。
重点化しなかった商品も、検証の対象にする
販促の振り返りでは、重点商品や実施した企画の成否に目が向きやすくなります。しかし、判断の改善には、重点化を見送った商品の動きも役立ちます。
理由が十分にわからず展開を増やさなかった商品が、その後に伸びたのであれば、どの条件を見落としていたのかを確認します。逆に、重点化を見送った商品が伸びなかった場合も、結果だけで判断が正しかったと決めず、当初の根拠が妥当だったかを確かめます。
売れたかどうかに加えて、その動きを事前に捉えられる情報があったか、次回は何を見れば判断できるかまで検討します。なお、販売実績を振り返る際には、欠品や売場展開の違いなど、自店の対応が売れ方に与えた影響も考慮する必要があります。
検証に備え、前節で整理した「確認できた事実」「考えられる理由」「まだ確かめられていない点」と、それを踏まえて選んだ対応を一緒に記録しておきます。
何を根拠に数量を決め、何を条件付きの準備にとどめ、どの情報が不足して判断を見送ったのか。この記録があれば、当初の判断と実際の結果を照らし合わせ、次回に向けた改善点を具体的に検討できます。
前年データを使う価値は、今年の計画に根拠を与えることに加え、その判断を検証し、次回に使える知識を蓄積できることにあります。
情報の確かさに応じて使い方を変え、条件の変化を見ながら対応し、採用した判断も見送った判断も確かめる。こうした作業を重ねることで、前年実績は、より具体的な販促判断に役立つ材料になります。
販促計画・市場分析のご相談について
当社では、公表統計や地域の情報をもとに、確認できる事実と仮説、追加で確認すべき点を整理し、販促計画の立案・点検を支援しています。
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執筆者
佐竹 昭治|株式会社サタケプランニングオフィス 代表取締役
小売・サービス業を中心に、消費動向・市場分析、販促計画の立案を支援。note「ミタカ販促設計ラボ」で「月刊販促設計」を連載しています。
本稿のもとになった記事
本稿は、「月刊販促設計」2027年1月号の全3回を基に再構成しています。同号は、2027年1月の販促計画を考えるため、前年同月である2026年1月の家計調査と気象データを分析したものです。