予測は、結果を検証して次に活かす
市場予測では、事前に見通しを立てるだけでなく、実績が公表された後の検証も重要です。予測時にどのような前提を置き、実際には何が起きたのか。その差を確認することで、市場の変化を捉え直し、次の判断に反映できます。
当社の市場予測レポートでは、予測の根拠となる前提をあらかじめ整理し、実績公表後にその前提とのずれを検証できる形で設計しています。その考え方が実際にどう働くかを、2026年6月の消費支出を題材にご紹介します。
対象:2026年6月、消費支出は実質マイナス3.3%
総務省の家計調査によると、2026年6月の二人以上世帯の消費支出は、物価変動を除いた実質で前年同月比マイナス3.3%でした。当社は3か月前にこの月の消費動向を事前に予測しており、今回その予測を実績と照合しました。以下は、その検証の手順です。
検証の実際:前提を二つに分けておく
予測を実績と照合するとき、「全体でマイナス3.3%だった」という結果だけを見ても、予測のどこが実績と食い違ったのかまでは分かりません。当社は予測を立てる段階で、判断の前提を二つの柱に分けています。世帯の使えるお金がどう動くかという収入の前提と、その月の天候の前提です。結果を検証するときも、この二つの前提ごとに実績と突き合わせます。
今回、前提と実績は次のように食い違っていました。
収入 | 天候 | |
|---|---|---|
事前予測の前提 | 家計は引き続き締まる | 前半は梅雨、後半は猛暑 |
実績 | 可処分所得は実質でプラスに転じた | 台風が相次ぎ、想定した猛暑は来なかった |
この二つを分けておいたことで、全体のマイナス3.3%という結果だけを見るのではなく、「収入前提はどうだったか」「天候前提はどうだったか」と、予測時の判断をそれぞれ検証できます。たとえば夏物衣料の落ち込みについても、当初想定した家計の締まりだけで説明するのではなく、想定した猛暑が来なかったこととの関係を確認する必要があります。なお2026年6月は旬ごとに天候が大きく振れたため、月単位・全国単位の平均だけでは捉えにくい動きもありました。こうした場合には、週単位・地域単位まで確認することで、売場への影響をより具体的に検証できます。同じ結果でも、収入側と天候側のどちらの想定がずれたのかが分かれば、翌月に打つ手は変わります。前提ごとに検証できることが、この設計の要点です。
この検証から取り出せる原則
6月の一件から、業種や月を問わず使える原則が二つ取り出せます。
一つは、前年のデータをそのまま前提に据えないことです。収入も、費目ごとの支出も、1年で増減の向きが逆になることがあります。前年が厳しかったから今年も厳しい、という延長線での予測は、符号が変わった瞬間に大きく外れます。
もう一つは、予測の前提を一つにまとめないことです。収入、天候など判断の前提を分け、前提ごとに検証できる形で組んでおけば、実績が出たときにどの前提がずれたのかを確認できます。確認できれば、次の判断を素早く修正できます。
当社の市場予測レポートについて
当社の市場予測レポートでは、予測結果だけでなく、前提と実績の差を検証できる形で整理しています。この記事で示した収入と天候の二つの前提は、当社が予測を組み立てる際に用いる5層の枠組みの一部です。枠組みの全体像と設計思想は、下記の記事でご覧いただけます。
市場予測は「当てるため」ではなく「外れたときに動くため」にある──小売チェーン向け5層分析の考え方
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出典:総務省「家計調査」(2026年6月分、2026年8月7日公表)/気象庁「2026年6月の天候」(2026年7月1日掲載)