販促カレンダーという言葉から、何を思い浮かべるでしょうか。
正月、節分、バレンタイン、母の日、夏休み、ハロウィン、クリスマス――。
一年間の行事や記念日を並べ、「この時期には、この商品を売る」と整理したもの。一般に「販促カレンダー」と聞いて、まず思い浮かべるのはこうした年間予定表かもしれません。
もちろん、それも販促カレンダーの一つです。
しかし、実際に小売・サービス業の販促計画を立てるうえでは、行事を並べるだけでは十分ではありません。
同じ1月でも、前年と今年では物価も所得環境も違います。暖冬になる年もあれば、厳しい寒さになる年もあります。前年に大きく売れた商品が、今年も同じように動くとは限りません。
そこで必要になるのが、
「いつ何を売るか」だけではなく、「なぜ、その時期に、その販促を行うのか」まで考えることです。
当社では、販促カレンダーを単なる行事予定表ではなく、市場や消費の変化を踏まえて、販促計画を実行できる形に整理するための設計図として考えています。
販促カレンダーと年間行事表は何が違うのか
年間行事表であれば、あらかじめ分かっている予定を並べることができます。
2月なら節分とバレンタイン、3月ならひな祭りや卒業、4月なら新生活――といった具合です。
しかし、行事があることと、需要が動くことは同じではありません。
例えば同じ「冬」であっても、気温の推移によって防寒用品や暖房関連商品の動きは変わります。物価上昇が続けば、生活者が支出する商品の優先順位も変わるでしょう。
前年に好調だった商品についても、
「今年も売れているから、来年も伸びる」
とは限りません。
前年の伸びが特殊要因によるものだった可能性もあれば、すでに需要が一巡している可能性もあります。
販促カレンダーをつくる際には、年間行事という「予定」だけではなく、その時点で生活者の需要がどう動きそうなのかを考える必要があります。
販促カレンダーをつくる前に、前年を読む
当社が販促カレンダーを作成するとき、まず確認するのが前年の状況です。
家計調査などの消費データを見ると、「何に支出が増えたのか」「何への支出が減ったのか」が分かります。
ただし、数字だけを見て、
前年に伸びたから、今年も重点商品にする
とは考えません。
なぜ伸びたのか。
気温の影響だったのか。前年の反動だったのか。所得環境によるものなのか。価格上昇によって支出額が増えただけなのか。
前年の数字をそのまま今年の計画へ移すのではなく、数字の背景を確認してから、今年にも使える情報なのかを判断します。
これが販促カレンダーをつくる最初の作業です。
季節だけでなく、消費を動かす条件を見る
販促計画では、季節や気象も重要な材料です。
ただし、
「暑くなれば夏物が売れる」
「寒くなれば冬物が売れる」
と単純に考えることはできません。
気温が変わることで生活者の行動が変わり、必要性や緊急性が生まれ、その結果として支出先が変わります。
当社では、この流れを、
気象の変化
→ 生活者の行動
→ 必要性・緊急性
→ 支出先
と考えています。
天気予報そのものを売上予報にするのではなく、天候によって「生活者がどう動くのか」を考えるわけです。
気温と消費の関係については、別の記事でも実際の家計調査と気象データを使って検討しています。
→ 「暑いから売れる」「寒いから売れる」は本当か――天気予報を売上予報にしないために
月間計画から、週単位の行動へ落とす
販促カレンダーでもう一つ重要なのが、時間の単位です。
「1月」「2月」「3月」という月単位だけでは、実際の売場や販促活動には落とし込みにくいからです。
例えば1月なら、年始と月末では生活者の状況が違います。
初売りや正月需要がある時期、通常の生活に戻る時期、寒さが本格化する時期――。
一つの月の中でも、需要が動く理由は変化します。
そこで、月間の環境を整理したうえで、
今月は何を重視するのか。
第1週には何を仕掛けるのか。
第2週には何を訴求するのか。
月後半には何へ切り替えるのか。
と、週単位まで具体化していきます。
年間計画と日々の売場の間をつなぐことも、販促カレンダーの役割です。
当社が作成している販促カレンダーでは、月全体の消費環境や季節要因を整理したうえで、週ごとの販促テーマや重点商材へ落とし込んでいます。
下記は、実際に作成した最新の販促カレンダーの一例です。

※掲載用に作成した「月刊販促設計」の販促カレンダーです。実際の業務では、業種・地域・商材・販促目的などに応じて設計します。また、作成時点で確認できるデータをもとにしており、その後の実績を踏まえて検証・修正することを前提としています。
実際の月別販促については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
「商材」だけでなく「理由」を共有する
販促カレンダーに、
1月第2週 風邪対策
マスク・のどケア・衛生用品
と書くだけなら、商品一覧とあまり変わりません。
重要なのは、
なぜ、この時期に、この商品を重点化するのか
が分かることです。
例えば、気温や乾燥、前年の消費動向、季節行事など、企画の背景まで共有できれば、売場づくりや広告、POP、SNSなどにも同じ考え方を展開できます。
販促カレンダーは、担当者に指示を出すためだけの表ではありません。
販促に関わる人が「なぜ、この企画をするのか」を共有するための資料でもあります。
販促カレンダーは、未来を当てるものではない
数か月先の販促カレンダーをつくるとき、当然ながら未来の天候も景気も正確には分かりません。
だからといって、何も考えず前年と同じ計画を立てるわけにもいきません。
そこで当社では、予測を「当てるためのもの」ではなく、外れたときに動くためのものとして考えています。
計画時点で、
「平年並みの気象を前提とする」
「この消費傾向が続く」
「この需要がこの時期に動く」
といった前提を整理しておけば、実際の状況が違ったときに、
どの前提が外れたのか
を確認できます。
そして、販促内容を修正する。
販促カレンダーは、一度つくったら一年間その通りに実行する固定的な予定表ではありません。
事前に判断の基準をつくり、実際の変化に合わせて修正していくための土台でもあります。
実績が出たら、販促カレンダーを検証する
販促は、実施して終わりではありません。
実績が出たら、計画時点で考えていた前提と実際の結果を照らし合わせます。
予想した需要は動いたのか。
動かなかったとすれば、何が違ったのか。
天候だったのか、所得環境だったのか、前年の特殊要因だったのか。それとも、そもそもの仮説が違っていたのか。
こうした検証を次の計画へ戻すことで、販促カレンダーは毎年同じ行事を並べ直す資料ではなくなります。
前年を読む
→ 今年を考える
→ 販促計画をつくる
→ 実行する
→ 結果を検証する
→ 次の計画を修正する
この循環をつくることが重要です。
販促カレンダーは「販促設計」を形にしたもの
当社では、消費動向や市場データを読み解き、そこから「次に何をするか」を具体化することを「販促設計」と呼んでいます。
販促カレンダーは、その考え方を実務で使える形にした成果物の一つです。
市場や消費のデータを読むだけでもなく、販促アイデアを並べるだけでもありません。
市場・消費データを読む
→ 数字の背景を考える
→ 需要が動く条件を整理する
→ 月間・週間の販促計画へ落とす
→ 実行する
→ 実績を検証する
という一連の流れを、一枚の計画へつないでいきます。
当社が考える「販促設計」全体については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
→ 販促設計とは何か――消費動向を「次の一手」に変えるための考え方
販促カレンダーは、予定表ではなく判断のための設計図
販促カレンダーには、年間行事も必要です。
しかし、行事を並べただけでは、その年の市場や生活者の変化には対応できません。
前年の消費を読み、今年の環境を考え、需要が動く条件を整理し、実際の販促へ落とし込む。そして結果を検証して、次の計画へ戻す。
「いつ何を売るか」だけでなく、「なぜ、いま、それを仕掛けるのか」を共有する。
それが、当社の考える販促カレンダーです。
販促計画・販促カレンダーの作成について
株式会社サタケプランニングオフィスでは、小売・サービス業を中心に、消費動向や市場データ、季節要因などを踏まえた販促計画・販促カレンダーの作成を行っています。
既存の販促計画の見直しや、年間・月間計画の整理、消費動向を踏まえた販促テーマの設定などについてもご相談いただけます。